
令和8年税制改正大綱が発表されました
12/19に税制改正大綱が公表されました。
大綱はあくまで“方針”の段階なので、今後の法案化や国会審議で細部が動く可能性はありますが、実務に影響が大きいところから順番に、ブログでわかりやすく見ていきます。
今回まず取り上げたいのが、中小企業の設備投資に直結する「少額減価償却(中小特例)」です。現行制度は、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得したとき、一定の要件のもとで取得価額をそのまま損金算入できる仕組みで、事業年度の合計には300万円の上限があります。
何が変わる見込みか
大綱では、この「1件あたりの基準」を30万円未満から40万円未満へ引き上げ、あわせて適用期限を3年延長する方向が示されています。さらに、対象法人から「常時使用する従業員の数が400人を超える法人」を除外する、と整理されています。
物価高によって制度対象となる30万円未満の物品の選択肢が狭まっている現状が背景にあります。(先んじて改正された少額飲食費もそうですね)
経営への影響
この改正の“効きどころ”は、いわゆる「30万円の壁」が少しゆるくなる点です。実務だと、PC・業務用タブレット・レジ周り機器・業務用プリンタ・工具類などが、値上がりもあって30万円を少し超えやすいところ。ここが40万円未満まで一括費用化しやすくなると、投資判断がスムーズになります。
■ 買うか迷ったまま先送りになっていた更新を、決算前に決めやすくなる
■ 購入年度の利益見込みが立てやすくなり、納税資金の段取りも組みやすい
■ 減価償却で数年に分ける管理が減り、処理もシンプルになりやすい
もともと少額減価償却資産制度は、基本的には税負担の先延ばし(前倒しで費用化しやすい)制度です。決算が近くなると、会社の着地予想とキャッシュを考えながらこの制度を有効に活用していくことで目前の税金を下げることができます。
【注意点】年間300万円の枠は“増えた”とは書かれていません
現行制度には、事業年度の合計で300万円までという上限があります。
そして今回の大綱の該当箇所では、「40万円未満へ引上げ」「従業員400人超の除外」「3年延長」は明記されている一方で、少なくともこの部分では「年間300万円枠を拡大する」という記載は見当たりません。
実務的には結構重要です。
1件あたり40万円未満が対象になると、使い勝手が良くなる反面、まとめて買うと300万円枠に到達しやすくなります。結果として、対象になる買い物が増えるのに、合計枠が同じなら「枠の奪い合い」になりやすく、思ったより早く枠を使い切って後半に買ったものは通常の減価償却になる、ということが起こり得ます。
実務でのおすすめ運用
■ 補助科目等で「40万円未満」と「40万円以上」に分けて少額減価償却資産の合計金額を常に管理しておく。
■ 40万円未満の枠は、必要度が高いもの(更新必須・故障リスクが高いもの)を優先する。
■ 40万円の基準は会社の会計方法によるため、税込会計より税抜会計を採用した方が得なことがある。
■ もし上限300万円の枠を超えた場合、決算作業の段階で合計額ができるだけ300万円に近い資産を選んで少額減価償却資産制度の対象としていく。
まとめ
「40万円未満への引上げ」は、派手ではないですが、最近よく聞こえてくる“30万円をちょい超えてしまった!”を減らしてくれる、ありがたい改正になりそうです。
一方で、年間300万円枠がそのままなら、これまで以上に合計管理が大事になります。
次回以降も、税制改正大綱の注目点を、実務に落とした形で順番に取り上げていきます。