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贈与税と相続税、どちらが得か?

相続・贈与

2025.09.19

〜税率表と具体シミュレーションで徹底比較〜

はじめに

「生前にお金や財産を贈与した方が節税になるのか?」
「それとも相続のままにしておいた方が有利なのか?」

これは相続税の相談で必ず出るテーマです。

贈与税には贈与税と比べて「税率が高い」というイメージがありますが、実際には贈与と相続の税率構造は大きく異なり、場合によっては贈与が有利に働くこともあります。
この記事では、贈与税と相続税の仕組み・税率表を整理したうえで、具体的なシミュレーション(財産2億円・相続人2名のケース)を通して「どちらが得か」を分かりやすく解説していきます。
※シンプルケースを想定しています

贈与税とは?

贈与税とは、個人から財産を無償で受け取った場合に課される税金です。
毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から、基礎控除110万円を差し引いた残りに課税されます。

つまり、1年間に110万円までの贈与は非課税であり、通常の贈与のことを「暦年贈与」と呼びます。
長期にわたりコツコツ贈与することで、相続財産を減らしながら節税効果を得ることができます。

贈与税の税率表(特例税率)

贈与税には「一般税率」と「特例税率」があります。
子や孫(18歳以上)への贈与は、一般税率より5%低い特例税率が適用されます。

【特例贈与財産用速算表】

課税価格(基礎控除後)税率控除額
200万円以下10%0円
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

相続税とは?

相続税は、亡くなった方の財産を相続や遺贈によって取得したときに課される税金です。

まず「基礎控除額」を差し引いたうえで残額に課税されます。

基礎控除額の計算式

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

相続人が2名の場合:
3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円

つまり、相続財産が4,200万円以下であれば相続税はかかりません。

相続税の税率表

課税価格(各人取得金額)税率控除額
1,000万円以下10%0円
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

贈与税と相続税、どちらが得か?

〜財産2億円・子ども2人に毎年贈与するケース〜

前提条件

■ 財産:2億円
■ 相続人:子ども2人
■ 毎年の贈与額:
   子1人あたり110万円(計220万)
   子1人あたり300万円(計600万)
   子1人あたり500万円(計1,000万)
■ 贈与税率:直系尊属から子への特例税率を使用
■ 贈与を10年間継続した場合の効果を試算
■ 贈与なしの場合は相続税が3,340万円になります

ケース1:毎年110万円を子ども2人に贈与(計220万円×10年)

■ 1人110万円 → 基礎控除内 → 贈与税ゼロ
■ 10年での贈与総額:220万 × 10 = 2,200万円
■ 相続財産:2億 − 2,200万 = 1億7,800万

相続税計算

基礎控除:4,200万
課税対象:1億7,800万 − 4,200万 = 1億3,600万
各人6,800万円 → 税率30% − 控除700万
= 1,340万 × 2人 = 2,680万円

結果

■ 相続税:2,680万円
■ 贈与税:0円
■ 合計負担:2,680万円
⇒ 贈与なし(3,340万円)との差:660万円の節税

ケース2:毎年300万円を子ども2人に贈与(計600万円×10年)

■ 1人300万円 → 課税価格190万円(300−110)
  税率10% → 贈与税19万円/年
  子ども2人 → 年38万円
■ 10年での贈与税:38万 × 10 = 380万円
■ 贈与総額:600万 × 10 = 6,000万円
■ 相続財産:2億 − 6,000万 = 1億4,000万

相続税計算

課税対象:1億4,000万 − 4,200万 = 9,800万
各人4,900万 → 税率20% − 控除200万
= 780万 × 2人 = 1,560万円

結果

■ 相続税:1,560万円
■ 贈与税:380万円
■ 合計負担:1,940万円
⇒ 贈与なしとの差:1,400万円の節税

ケース3:毎年500万円を子ども2人に贈与(計1,000万円×10年)

■ 1人500万円 → 課税価格390万円(500−110)
  税率15% − 控除10万
  = 390万 × 15% − 10万 = 48.5万円
■ 子ども2人 → 年97万円
■ 10年での贈与税:97万 × 10 = 970万円
■ 贈与総額:1,000万 × 10 = 1億円
■ 相続財産:2億 − 1億 = 1億円

相続税計算

課税対象:1億 − 4,200万 = 5,800万
各人2,900万 → 税率15% − 控除50万
= 385万 × 2人 = 770万円

結果

■ 相続税:770万円
■ 贈与税:970万円
■ 合計負担:1,740万円
⇒ 贈与なしとの差:1,600万円の節税

比較表

パターン贈与総額贈与税(10年)相続財産相続税合計負担節税効果
贈与なし0円2億円3,340万3,340万
110万×2人2,200万0円1.78億2,680万2,680万▲660万
300万×2人6,000万380万1.4億1,560万1,940万▲1,400万
500万×2人1億円970万1億円770万1,740万▲1,600万

結論

■ 基礎控除内(110万円)を子ども2人に行うだけでも効果はあるが限定的(▲660万円)。
■ 300万円×2人(年600万円)規模で10年間続けると、1,400万円の節税効果。
■ 500万円×2人(年1,000万円)の贈与を10年間行えば、贈与税負担が増えるものの、それ以上に相続税削減効果が大きく、1,600万円の節税が可能。

⇒ 財産2億円規模では、積極的な生前贈与が相続税対策として非常に有効であることが数字で確認できます。

令和6年改正の影響

ここで忘れてはならないのが、令和6年の税制改正です。

  • 暦年贈与の持ち戻し期間が「3年→7年」に延長
  • 相続時精算課税制度に「毎年110万円までの非課税枠」が新設

これにより、亡くなる直前に行った贈与の多くが相続財産に算入されるようになり、短期間での駆け込み贈与の効果は薄くなりました

つまり、これからの相続税対策は「早めにコツコツ始める」ことがますます重要になります。

結論

  • 贈与税と相続税を比較すると、非課税110万円を超えた贈与は有効な節税策になることもある。
  • 高額の一括贈与は贈与税負担が大きくなり、むしろ損になるケースが多い。
  • 有効な対策は「少額を長期間にわたり贈与すること」であり、暦年贈与・相続時精算課税制度を組み合わせて柔軟に設計する必要がある。

贈与税と相続税のどちらが得かは「金額・タイミング・家族構成」によって大きく変わります。
令和6年改正により「短期集中型の贈与」が不利になり、長期的な計画と専門家のサポートが欠かせません。

「うちの場合はどうなるのか?」と気になったら、まずはシミュレーションから始めてみましょう。
当事務所では最新の制度改正を踏まえ、皆さまのご家庭に合った相続・贈与のプランをご提案しています。

やなぎ税理士事務所ではご相続の悩みを積極サポート中です

やなぎ税理士事務所では、相続にお悩みの方に対するサポートも行っております。

京都を拠点に親身に対応いたします。(リモート対応も可能です)

どうぞお気軽にご相談ください。

(記事は執筆時点の法令等に基づき作成しています)

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