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相続税対策でよくある誤解

相続・贈与

2025.09.11

はじめに

相続税という言葉を耳にすると、「資産家だけの話」「自分の家庭には関係ない」と感じる方も少なくありません。
しかし実際には、都市部や観光地に自宅や土地を持っているご家庭では、思いがけず相続税の対象になるケースが増えています。特に、平成27年に実施された「相続税の大改正」によって相続税の課税対象となる事例が大幅に増加しています。

京都のように地価が高いエリアでは、「家と土地だけで相続税が発生する」ということも珍しくありません。

ところが相続税対策について調べてみると、インターネットや人づての情報があふれており、かえって混乱してしまう方が多いのも事実です。なかには誤った理解のまま準備をしてしまい、実際に「もっと早く相談していれば…」と後悔される方も実務経験の中で沢山お会いしてきました。

そこで今回は、「相続税対策でよくある誤解」を取り上げ、具体例を交えながら正しい知識を整理していきます。

誤解①:110万円までの贈与なら、毎年必ず非課税になる

✖ 誤解の内容

「贈与税には基礎控除110万円があるから、その範囲内で贈与すれば安心」という考えは非常に広まっています。実際、毎年お子さんやお孫さんに110万円ずつ渡しているという方も少なくありません。

◎ 正しい理解

確かに暦年課税の基礎控除は年間110万円です。しかし、形式を整えていないと「実際には贈与ではなく相続財産」とみなされるリスクがあります。

よくあるNG例

  • 贈与契約書を作らず、ただ通帳に振り込んでいるだけ
  • 親の通帳からお金を移しても、子ども本人が自由に使えない
  • 毎年同じ日に同じ金額を渡しており「定期金のような扱い」になっている

こうした場合、税務署から「名義預金」と判断され、結局は相続財産に組み戻されてしまいます。
税務署による相続税の税務調査ではこの「名義預金」を指摘されるケースが非常に多く、特に気を付ける必要があります。

専門家からのアドバイス

贈与を行う際は、贈与契約書を作成し、受贈者本人が管理できる通帳に入金するなどの手続きをきちんと踏むことが大切です。

誤解②:生命保険に入れば相続税はかからない

✖ 誤解の内容

「相続税対策といえば生命保険」と考える方は多いです。確かに生命保険金には非課税枠があり、相続税の計算上メリットがあることは事実です。

◎ 正しい理解

生命保険には「500万円 × 法定相続人の数」までの非課税枠があります。たとえば相続人が3人なら1,500万円までは非課税になります。

しかし、それを超える部分は相続税の対象です。また、保険料を誰が払っていたか、受取人を誰にするかといった設定によっては、想定外の税負担が生じることもあります。

専門家からのアドバイス

生命保険は節税手段の一つに過ぎず、資産全体のバランスを見て加入設計することが重要です。

誤解③:遺言書があれば相続税も安くなる

✖ 誤解の内容

「遺言書さえ作っておけば、税金の面も安心」と思われている方が少なくありません。

◎ 正しい理解

遺言書は「財産の分け方」をスムーズにするためのものであり、税額そのものを直接減らす効果はありません

ただし、遺言の内容によっては、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」などの税制上の優遇が使いやすくなる場合があります。

具体例

遺言がなく遺産分割協議がまとまらないと、特例が使えずに本来より高い相続税を払うことになってしまうケースがあります。遺言は節税のためというより、結果的に節税につながる「準備」と考えるとよいでしょう。

誤解④:相続税対策は亡くなる直前にやればいい

✖ 誤解の内容

「元気なうちは関係ないし、相続対策なんて最後でいい」という先延ばし思考。

◎ 正しい理解

相続税対策の多くは時間をかけて実行することに意味があります

  • 暦年贈与 → 毎年少しずつ行うことで効果を発揮
  • 不動産の活用 → 長期的な運用で評価減の効果を期待
  • 法人設立や資産移転 → 数年単位のスケジュールが必要

亡くなる直前に慌てて対策しても、法律上は相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、効果が薄れてしまいます。

専門家からのアドバイス

相続対策は「早く始めた方が選択肢が広がる」ものです。特に贈与は時間という武器を味方につけることが大切です。

誤解⑤:うちは資産が少ないから相続税は関係ない

✖ 誤解の内容

「普通の家庭だから相続税なんて無縁」という思い込み。

◎ 正しい理解

相続税には「基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」があります。相続人が2人なら4,200万円まで非課税です。
しかし、都市部や観光地の土地は想像以上に評価額が高く算定されることがあります。

実際のケース

京都市内の住宅地に約40坪の土地を持っていた方が、「時価では3,000万円程度」と考えていました。ところが路線価評価では5,000万円を超え、結果的に基礎控除を超えて相続税が発生してしまいました。

専門家からのアドバイス

「思わぬ課税対象」にならないためには、事前にシミュレーションを行うことが安心につながります。

まとめ

相続税対策は、情報が氾濫している分、誤解も多く広まっています。

  • 贈与は形式を整えなければ否認される
  • 生命保険は万能ではない
  • 遺言書は節税そのものではなく、円滑な分割の手段
  • 相続対策は時間を味方につけることが大切
  • 「うちは関係ない」は危険、まずは試算から

こうした誤解を正しく理解することで、家族にとって安心できる相続を実現することができます。

専門家に相談することの大切さ

相続税対策は、家庭ごとの資産構成や家族関係によって最適解が変わります。
「インターネットで見た方法」や「知人に勧められた対策」が自分の家にそのまま当てはまるとは限りません。

やなぎ税理士事務所ではご相続の悩みを積極サポート中です

やなぎ税理士事務所では、相続にお悩みの方に対するサポートも行っております。

京都を拠点に親身に対応いたします。(リモート対応も可能です)

どうぞお気軽にご相談ください。

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