
〜令和6年改正で押さえておきたいポイント〜
はじめに
相続税対策の王道といえば「生前贈与」。財産を早めに次世代へ移すことで、相続税の負担を減らす効果が期待できます。
しかし、令和6年の税制改正により、暦年贈与・相続時精算課税制度のルールが大きく見直されました。これから贈与を考える方は、この改正内容を正しく理解しておくことが重要です。
今回は、代表的な3つの方法と改正のポイントをわかりやすく整理します。
1. 暦年贈与の活用と「7年ルール」
基本の仕組み
暦年贈与とは、1年間(1/1~12/31)に贈与された財産のうち110万円までが非課税となる制度です。毎年少しずつ贈与を続ければ、長期的に大きな財産移転が可能になります。
改正のポイント
従来は相続直前の贈与は実質相続で渡したものと近しいとして「相続開始前3年以内の贈与」は相続財産に加算されていました。
しかし、令和6年以降の贈与からは、この加算期間が3年⇒7年に延長されました。
(加算期間は令和6年から段階的に延びていき、令和13年からは完全に7年間となります)
つまり、被相続人が亡くなる直前の7年間の贈与は、相続税計算上、相続財産に持ち戻されることになります。
実務への影響
- 直前に始めても効果が小さくなる
- より早いタイミングでの贈与開始が必須
- 10年、20年単位の計画性がこれまで以上に重要
例
もし70歳で贈与を始めて77歳で亡くなった場合、その7年間の贈与はすべて相続財産に算入されます。
一方、60歳から贈与を始めれば、相続時に加算されない期間を多く確保でき、節税効果が大きくなります。
2. 相続時精算課税制度の活用(令和6年改正)
基本の仕組み
60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に対して、2,500万円まで贈与が非課税になる制度です。贈与した財産は相続時に合算して精算されます。
改正のポイント
令和6年から、相続時精算課税を選択した場合でも、毎年110万円までの贈与は課税対象に含めなくてよいとされました。
従来は1円でも贈与を行うと贈与税申告が必要となり、その事務的煩雑さから選びづらい制度でしたが、今回の改正によって非常に使い勝手のいい制度になりました。
これにより、
- 一括贈与(2,500万円まで)
- 小口贈与(毎年110万円まで)
の両方を柔軟に組み合わせることが可能になりました。
メリット
- まとまった金額を一度に贈与できる
- 改正により「小回りのきく贈与」との併用が可能
- 制度利用の場合は贈与税申告時期に税務署への届出が必要
- 教育資金・住宅資金などでの活用に有効
3. 教育資金・住宅取得資金の非課税贈与
暦年贈与や相続時精算課税に加えて、特定目的の贈与に使える非課税制度も有効です。
教育資金贈与
祖父母が子や孫に教育資金をまとめて贈与する場合、一定額まで非課税。塾代や大学費用など幅広く利用できます。
住宅取得資金贈与
子や孫が住宅を購入する際、一定額まで贈与が非課税。住宅ローン負担を軽減しつつ相続財産を減らすことができます。
注意点
これらの制度は適用期限や条件が改正で変わるため、最新情報の確認が不可欠です。
まとめ
令和6年改正により、相続税対策としての贈与の位置づけは大きく変わりました。
- 暦年贈与:算入期間が3年→7年に延長。効果を得るには早めに始めることが必須。
- 相続時精算課税制度:110万円の非課税枠が新設され、使いやすさが格段にアップ。
- 教育資金・住宅取得資金贈与:目的型の非課税制度で、家族支援と節税を両立。
これからの相続税対策は、「どの制度を、どの順番で、どのくらいの規模で使うか」がカギとなります。
相続開始直前では効果が薄くなるため、早めに計画を立て、専門家と一緒に最適な方法を選んでいくことが大切です。
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